株式会社 ケーヤード

造船気質


最新19GTサンマ漁船、 船速出力曲線は設計者の通信簿 ( 2014年9月 )


"船速出力曲線" ( 第一明洋丸、 50GT未満クラス最速。 流体学ぶ皆様にとって貴重なモノですよ。 )



上グラフは船速出力曲線と言います。よく船舶の基本設計者はこれが
書けないと嘘者だとか言いますが、 これは結果表です。 所謂、 自分で
書く通信簿です。 対照船の結果が良くないと書く気にもなりませんし、
書けません。 ですよね。 自分で採点し自分で評価しないとね。 何でも。

19トン〜49トン級のサンマ漁船の場合、 最速・省エネ船型を求めても積荷
が積めないとか乗りが悪ければだだの器になる。 少し前までの
船速出力曲線とは最速・省エネ船型に少しだけ近づくための指標となる
結果表ぐらいな程度であった。 だがここ15年でエンジン出力が毎年少し
づつアップしつつ、 LED集魚灯とアルミ漁船による大幅な軽量化の恩恵
と3Dでの船型研究により"船速出力曲線"が、 俄然面白くなってきた。

x方向に船速(kt)。 y方向に主機関出力(何でか5段階)。 この表で何を
見る・比較するかは自社の同漁種建造船である。 相当に図太い人
(初期の自分?)でもないかぎり他社に聞きに行く人はまずいないし、
教えてくれるもんでもないから。 進化の証として何ノット付近を決めて、
そこでの出力差を知り、 燃料消費率を探って省エネ率を出したりします。


今回の上グラフで、ほぼ同諸寸法・同仕様・設備で船型だけがNewという
条件では、奇跡の結果です。 何語っても新設計の冒険は経営者設計者
にしかできない命がけの決断である。 あっ、 書いてしまった。 人の船で
勝手に人生勝負したりしてはいけませんよね。 結果として満載帰港
12kt付近で21%出力削減した。 油が高くなれば主機回転抑えて他船
と同一速力で走れば省エネにも主機関の寿命も伸びる大変得な話。


冒険させてくれた明洋水産の小田社長に出会えて本当に良かった。
船屋の魂を揺さぶる何かを持ってるお方です。 結果が全て。根室に
来た意味の一つとしたら神の仕業しかない。 船造りは実現力です。





上記の船速出力曲線が第一明洋丸19トン。 同型3隻は一線を超えてます。

第五十五 錦隆丸・栄福丸が同型船で続いた。 この美しいサイド波
(満載出航)は一連の事業の成果を物語ります。 船舶関連研究機関
とやらも少し垣間見たし、 いい体験になりました。 感謝申し上げます。


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