株式会社 ケーヤード

造船気質

造船現図 ( Roft ) 2010年9月に書いて

          現図(アナログ) − 現図場で体で書く現図作業。 現在50才未満の職人は何人
                             いるんだろう? 指で数えるほどかも知れない。

            ライン引き・フェアリングからすべての型出しまで
                現図とは、 造船に限らず 飛行機・車両・建物でも何でも 三次元造形
              となる総ては、 初めに基本設計から三次元の物体を紙に書いて表すには
              平面・側面・正面図で描かれたライン図(縮尺)が出図されてからの工程
              作業である。 特殊な決め事・ルールに従い、 現図場にて実寸(1/1)でライン
              を引き・部材配置図(コンプロ)、 構造図を見て部材位置を書き込んで搭載
              ブロックバットシームや平板の大きさに合わせ横方向溶接シーム、  
              3D縦溶接シーム、 等の外板シームの割り込みを外板展開図を参考に工場 
              のグレード、現場組立の技量、 外板曲げの技量レベルでシーム割をしてから
              外板展開・外板曲げ型取り・フイルムで部材の型取り・大部材の定規取り  
              などをして、次のマーキング工程に渡し、 現場組立担当と艤装設計担当
              と詳細打合せしながら全構造部材を書き出す、 大変な現場熟練職をいう。
            
                机上で設計の描いたライン図は縮尺図です、 たとえば 1/40 の縮尺
              とします、 それを 1/1の実寸で書くことは図面上の1mmが実寸では40mmの
              誤差になり、 修正が必要なのです 図面上で鉛筆線一本分の誤差もムラも
              無い精度でたとえ熟練の昔の設計屋がかけたとしても。 現図の作業は必要。
              現寸で40mm狂えば はっきり船にはなりません、 人間の目の凄さは20mで
              3mmの線のムラまで わかるものなのです、 それを3面(平面・側面・正面)
              総ての交点・寸法を合わせて総ての線がムラのないように書き上げる
              技術は、 棋士の上段者なみの戦いを勝ち抜くみたいな作業であります。 

               この作業は2D-CADで交点総てを1/100mmの精度でフェアリングするのも
             現図場と同様の熟練がいる。 これを何とかしようと船舶3D-フェアリングCADを
             導入してもサフェースの精度を上げていくと結局、 未だに楽はできずじまい。
            

               
         現図場(Mould Roft) 今は、 ありません。

              現図は現図場という 最小面積でも建造する船の全長の60%以上の長さと
            シューピース下面からバウチョックまでの高さ以上の大床部屋が必要です。
            現実的に、 全長50mの船では 30mの長さで 約15mの幅 の現図場がいる。
            最低床面が黒板色で水平面、 バッテン(長いカーブを書くための角木材・
            塩ビパイプ)、 1寸釘でバッテンを押さえるために15mm以上の床ベニヤが
            必要設備。 どこも2階の屋根裏構造のような場所が多く、 夏・冬は過酷。
            とても頭脳・神経を使う人の仕事場ではなかった。 何で軽視されてたんだ〜?
            それは小型造船所の多くはこの部門の一番肝心な現場寸法職を育てられず、 
            下請けさんに請負わせていたから。 今、 ないがしろの罰が・・ 今の元凶です。

            私がこの世界に入った昭和50年頃、 全国的に造船所下請け技術系職人は
            しのぎを削るように切磋琢磨していたし、 人材の層が厚く、 人を育て、
            造船技術への情熱が高かったと思い返します。 自分はその現図工としての
            最後あたりの職人なんです、 その後気付けば後輩はもちろん、 今でも年の
            近い現図職人は見たことがない。 CAD現図化が遅れたら大変なことに。
            
            


          今の時代、現図作業は詳細設計(3D-CAD現図)の範疇に

              これからは、 3D-CAD現図プロッター出力の流れに、 プロッター室
            として、 10畳程の部屋があるだけで十分。 K-Yardでは事務所内にある。
            以前の現図場はドックハウス・休憩室に変わっています。

              現図は詳細設計の範疇に、 設計人も現図知識を全員習得し、 
            部材フィルム型、 大型部材のスチール定規製作、 外板展開、
            マーキング・組立要領書まで書いて、 製作の最後まで一人の
            人間が責任を持つ。 設計者はスキルもタスクも増すが、
            技術伝承と生産性・意思伝達性の向上には当然なる思考だ。

              現図場はいずれ小型造船業法の特定設備からも削除されます。 
            詳細設計で型出しまでする時代になっても本来の造船現図の基本と 
            取り決めは不変ですし、 寸法屋の基本姿勢と絶対間違わない技術
            は永遠です。 専用CAD現図ソフトShipConstructorなどもあり、 
            今後導入する予定は未定ですが、 外板展開などもいずれ 
            ソフト使ってが普通になるでしょうね。 そのソフト屋の社長が
            元造船現図屋です。 縁がありそう!、 いずれ 佐伯に行って・・・。
 
            当然、 2010年8月、 佐伯に行ってあってきました。 想像以上に自分に
            似たお人でした。 「勉強せんと楽しくソフトを使えるは絶対無い 」
            「ソフトは使う人の為に作っていない、 欲しい所取りで使うのが普通」
            「ソフトにこれだけでいいは無い。 特に3D創成変形と質の高い
            サーフェースははっきり言って未だに完成されている物は少ないと
            言い切れる」 だから年をとっても希望を抱き、 自分の創成プロセス 
            と船型に夢を見続けれるんだな。 この続きは後々でコンテンツの
            大ネタになる。  好きな人だけお楽しみあれ。             


 



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